「退職を考えているが介護職って退職金もらえるの?」
「今辞めたら退職金はいくらになるのかな?」
このような悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
結論から言いますと、介護施設の就業規則に「退職金制度」が明記してあればもらえます。
とはいえ、介護施設や事業所では、必ずしも「退職金制度」を導入する必要はありません。そのため、入職のときにもらった就業規則を確認し、「退職金制度」について書かれているかを確認しましょう。
この記事では、そんな介護施設での退職金に関する調べ方や計算方法について紹介します。勤続年数別での退職金の平均目安や注意点、よくある質問もあわせて紹介するので、ぜひ最後まで読んでみてください。
そもそも介護施設に退職金はある?
最初に紹介したように、自分が勤めている介護施設や事業所で「退職金制度」が導入されていれば、退職金を受け取ることができます。というのも、必ずしも「退職金制度」を導入しなければならないという決まりがなく、退職金がなくても違法とはならないためです。
このことから、退職金がもらえるかどうかは介護施設や事業所によって異なりますので、以下の方法で確認しましょう。
- 就業規則
- 介護事務や総務担当に聞く
- 退職した職員に聞く
就業規則
入職のときにもらっている就業規則からたしかめることができます。就業規則に退職金に関する項目があれば、就業規則に沿って退職金を支払う義務が生じるからです。たとえば就業規則に「退職金について」や「退職一時金について」といった項目があれば、退職金はもらえると考えていいでしょう。
原則として就業規則は、職員がいつでも見ることのできる状態にしておかなければなりません。印刷して保管しているファイルやパソコン上から閲覧できますのでチェックしましょう。
介護事務や総務担当に聞く
介護事務や総務担当者に聞くことで、「退職金制度」の有無についてたしかめることができます。どこまで細かく教えてもらえるかは、介護施設や事業所の方針によって違いますが、おおよその退職金や手続き方法は答えてもらえるでしょう。
とはいえ、退職金のことばかり聞くと「辞めたいのかな?」と、勘ぐられるかもしれません。円満退職を考えるなら計画的に行動することが大切でしょう。
退職した職員に聞く
介護事務や総務担当に聞きにくい場合、退職した職員に聞くこともひとつの手段です。退職金をもらえるかどうかくらいなら教えてもらえるかもしれません。さらに、退職金の手続きに必要なものなどが分かる可能性もあります。
ただし、勤続年数や職位、給与額などによって退職金の受け取り額は変わるので、勤続年数や職位、年齢などが近い退職者に聞くのがいいでしょう。
介護施設における退職金の計算方法
介護施設や事業所によって、取り入れている退職金制度や基本給、退職理由などで退職金の額は変わります。なぜなら、退職金制度の種類によって退職金の計算方法が異なるからです。
ここでは、多くの退職金制度で採用されている「社会福祉施設職員等退職手当共済事業」を紹介します。計算式は、以下の通りです。
「計算基礎額」×「支給乗率」×「被共済職員期間」
計算基礎額
「計算基礎額」は、退職前6ヶ月間の本棒月額平均に応じて定められています。本棒月額平均とは、退職金の基礎となるものであり供給表に定める格付本棒のほかに、棒給の調整額を加算した額です。
退職前6か月の平均本俸額(円) | 計算基礎額(円) | 退職前6か月の平均本俸額(円) | 計算基礎額(円) |
~73,999 | 62,000 | 205,000~219,999 | 205,000 |
74,000~85,999 | 74,000 | 220,000~234,999 | 220,000 |
86,000~99,999 | 86,000 | 235,000~249,999 | 235,000 |
100,000~114,999 | 100,000 | 250,000~264,999 | 250,000 |
115,000~129,999 | 115,000 | 265,000~279,999 | 265,000 |
130,000~144,999 | 130,000 | 280,000~299,999 | 280,000 |
145,000~159,999 | 145,000 | 300,000~319,999 | 300,000 |
160,000~174,999 | 160,000 | 320,000~339,999 | 320,000 |
175,000~189,999 | 175,000 | 340,000~359,999 | 340,000 |
190,000~204,999 | 190,000 | 360,000~ | 360,000 |
支給乗率
支給乗率は、被共済職員期間や退職理由に応じて設定される支給率をもとに定められています。国家公務員に準拠し、 被共済職員期間が長くなるにつれ支給率が上昇。11年、20年、25年になるときに、それより以前の年数分についても支給率を引き上げて計算され、退職金額が大幅に伸びる構造です。
【勤続年数別】介護施設における退職金の平均目安
勤続年数別の介護施設における退職金の平均目安として、「社会福祉施設職員等退職手当共済事業」の早見表よりまとめていますので、参考にしてください。
被共済職員期間 | 計算基礎額 | 対象給付金支給額 |
5年勤務(本棒月額200,000円) | 190,000円 | 495,900円 |
10年勤務(本棒月額230,000円) | 220,000円 | 1,148,400円 |
15年勤務(本棒年額270,000円) | 265,000円 | 2,858,820円 |
20年勤務(本棒年額290,000円) | 280,000円 | 5,724,600円 |
一方で、被共済職員期間が1年未満の場合は、原則支給されません。導入している退職金制度にもよりますが、勤続1年以上を条件にしている年金共済制度がほとんどです。ただし、条件次第では退職一時金が受け取れるケースもあるため、就業規則を確認したり上司や担当者に確認しましょう。
介護施設における退職金の3つの注意点
介護施設における退職金の3つの注意点は、以下の通りです。
- すぐにもらえるわけではない
- 退職金にも税金がかかる
- 懲戒解雇だと大幅に減額
すぐにもらえるわけではない
退職金はすぐにもらえるわけではなく、退職後1~2ヶ月以内に支払われることが多いです。退職金制度のある介護施設や事業所では、就業規則に「退職金は◯ヶ月以内に支払うものとする」などと明記されていますので、確認しましょう。
さらに、退職金をもらうには所定の手続きも必要なので、あわせてたしかめることをおすすめします。
退職金にも税金がかかる
結論から言うと、退職金にも「所得税」と「住民税」の2種類の税金がかかります。
そもそも退職金には「退職所得」「雑所得」といった2つのケースがあります。
「退職所得」は、退職時にまとまった金額を受け取るいわゆる「退職金」です。退職所得の場合、税金を軽くするための所得控除が受けられるので、必要な手続きを確認しましょう。
さらに毎月決まった額を年金形式で受け取る退職金もあります。これは「雑所得」として課税の対象となります。
懲戒解雇だと大幅に減額
著しい不信行為や暴行横領などの刑事事件に該当するような犯罪行為で懲戒解雇されると、退職金は大幅に減額されます。
ただし、就業規則に懲戒解雇に関する規定が書かれていない場合は減額が難しいです。とはいえ、就業規則に「支給しない」と明記されているケースもが多いため、気になった方は一度確認することをおすすめします。
介護施設の退職金についてよくある質問
最後に介護施設の退職金について、よくある3つの質問にお答えします。
- 介護福祉士だと退職金は上がる?
- 退職金の請求はできる?
- 派遣社員でも退職金はある
介護福祉士だと退職金は上がる?
上がります。
資格を取得していると資格の手当など昇給対象になり、計算基礎額が上がるためです。
計算基礎額とは退職金を計算するための基礎となる金額のこと。退職時の基本給を計算基礎額としたり、基本給に一定率をかけ合わせたりなど、施設や事業所によって計算方法が異なります。
退職金の請求はできる?
できます。
就業規則に支払い条件などの記載がない場合、労働基準法第23条に「退職者から退職金の請求があった場合、使用者は7日以内に支払わなばならない」と定められています。もらえる条件が揃っているにも関わらず支給されない場合は、介護施設や事業所に請求することも可能です。
ただし、退職金が請求できるのは退職してから5年以内と労働基準法第115条の規定に定められているので、早めに手続きしましょう。
派遣社員でも退職金はある
派遣元や派遣先の介護施設、事業所が退職金制度があり正社員に退職金を支払っていれば、2020年4月1日より派遣社員にも退職金を支払うことが義務付けられました。
派遣会社がどの退職金制度を採用しているかにより、支払い方法や定義もかわってきます。派遣社員が退職金を受け取る方法は、以下の4つです。
- 退職金前払い制度(時給に上乗せ)[労使協定方式]
- 中小企業退職金共済制度[労使協定方式]
- 派遣会社の退職金制度[労使協定方式]
- 派遣先の退職金制度[派遣先均等均衡方式]
どの制度が採用されているか気になった方は、就業規則を確認しましょう。
まとめ
この記事では、介護施設や事業所における退職金がもらえるための確認方法や計算方法などを紹介しました。
勤めてきた介護施設で退職金制度は、就業規則を調べれば簡単に確認できます。退職後の生活の計画を立てられるよう、転職をする際は十分調べましょう。
ただし、懲戒解雇のような形で辞めてしまうと、退職金が支給されないケースもあるので注意が必要です。
この記事が退職金が気になる介護士にとって、少しでも参考になれば嬉しいです。