「介護を行う際の使ってはいけない言葉を知りたい」
「介護士が覚えておきたいクッション言葉と使用例を教えてほしい」
介護サービスを提供する際、介護士自身の言葉使いによって、相手を不快にさせてしまうのは避けたいと思う人も多いでしょう。
この記事では、下記を中心に紹介します。
- 介護士が使ってはいけない11の言葉
- 介護士が正しく接するために心がけたい3つのこと
- 【今日から使える】介護士が覚えておきたい「クッション言葉」
特に初めて介護士として働く人は、ぜひ最後まで目を通してみてください。
介護士が使ってはいけない11の言葉
介護士が利用者に対して使ってはいけない言葉は以下の通りです。
- タメ口
- 過剰な敬語
- 赤ちゃん言葉
- 命令口調
- 行動の制限
- 呼び捨てやあだ名
- 脅し文句
- 急かす言葉
- 専門用語
- 若者言葉
- 侮辱する言葉
なぜ使ってはいけないのか、理由とともに紹介します。
タメ口
「タメ口」は利用者に対する敬意が見られず、不快な思いをさせてしまう可能性があるので、使用を控えた方がいいでしょう。
利用者と打ち解けて距離感が近くなってきた際、ついタメ口を使ってしまう介護士もいます。しかしタメ口は直接会話する利用者やその家族だけでなく、周りの人から「あの介護士は仕事を雑に行っている」などのマイナスの印象を与えることもあるのです。
いくら仲良くなっても利用者は大事なお客さまであり人生の先輩である点を忘れず、必ず敬語を使うようにしましょう。
過剰な敬語
利用者に対する口調は敬語が基本となるものの、「先日おっしゃっていた本はお読みになられましたか?」「ジュースとお茶がございますがどちらがよろしかったですか?」など、あまりに聞き慣れない言い回しや過剰にへりくだった敬語は使用しない方がいいでしょう。
介護の現場となる事業所は、利用者にとっての生活の場であるため、家庭同様の安心感を得たい人にとっては「冷たい」「堅苦しい」と感じてしまいます。
利用者やその家族と接する際は、日常語に「です」「ます」などの助動詞を添えた丁寧語の言葉使いを意識したコミュニケーションを行いましょう。
赤ちゃん言葉
利用者に対して「よくできまちた」「ねんねしましょうね〜」などの赤ちゃん言葉は心地よく受け取られない表現です。利用者を下に見ているととらえられ、本人はもちろん家族からもバカにされていると思われてしまいます。
利用者は加齢や病気などによって自力で日常生活が送れなくなり、サポートを受けるために入所や通所をしている人たちで、赤ちゃんではありません。
介護士よりもずっと年配である場合も多いため、業務中に使用する口調はあくまで敬語を心がけ、利用者に対して敬意を持って接しましょう。
命令口調
「もっと食べて」「そんなことしないで」など、利用者に伝わりやすいと考えて命令口調で強い言葉を使う介護士もいますが、介護の現場では適切な表現ではありません。
命令口調を使うと相手を緊張させてしまったり、叱られていると思われたりして、介護者のモチベーションが下がってしまう可能性があるからです。
命令口調には「相手を思う通りに動かしたい」という心理が隠されているため、利用者の言動を尊重する気持ちを持って接すると、自然に減るでしょう。
行動の制限
「待っていてください」「席に座っていてください」などはお願いや依頼の表現として使う人が多いものの、利用者の行動を制限している「スピーチロック」と呼ばれる言葉です。
スピーチロックとは、言葉により身体的または精神的な行動を抑制することで、「言葉の拘束」とも呼ばれています。スピーチロックにより、コミュニケーションがうまく取れなくなったり、行動意欲や日常生活動作(ADL)が低下したりする高齢者もいます。
普段の何気ない声かけであっても、介護職員一人ひとりが「今の声掛けは、スピーチロックになっていなかったか」と考え、ケアを行うことが大切です。
呼び捨てやあだ名
いかに利用者との仲良くなり距離が縮まっても、呼び捨てやあだ名で呼ぶのはやめましょう。
これは特に50代や60代など、比較的利用者と年齢が近い介護士にみられるものの、いかに仲良くなった利用者であっても、呼び捨てやあだ名は失礼に感じる人が多いようです。
基本的には「名字+さん」付けで呼ぶようにして、事業所ごとに規定があれば従いましょう。
脅し文句
「静かにしないとご飯抜きだよ」などの脅し文句は使用しないようにしましょう。誤った行動をとったときに罰を与えるようなことをすると、利用者から信頼されなくなります。
介護士にも「この時間までにこの業務をする」と決められたスケジュールがあるため、業務を優先したい気持ちが強く、脅し文句を使ってしまう人もいるようです。
しかし「利用者優先」の考えをもとに業務内容を組み立てれば、利用者に脅し文句を使うことのない、無理のない業務内容に組み替えられる可能性があります。
急かす言葉
業務優先になるがあまり、利用者に急かす言葉をかけてしまう介護士もいるでしょう。「早くお風呂入るよ」「19時までにご飯食べちゃって」などがこれにあたります。
しかし高齢者の行動を急かすと、転倒や転落といった事故が発生する可能性があり、非常に危険です。特に身体機能が低下した利用者に使うと、尊厳を傷つけてしまうこともあります。
介護士は焦って次から次へと利用者にたたみかけるようなことはせず、利用者のペースに合わせて見守る姿勢でケアを行うと良いでしょう。
専門用語
「徘徊(ひとり歩き)」「傾眠(うとうとする)」などの専門用語は利用者や利用者の家族の前では使用しないようにしましょう。職員同士では伝わったとしても、ほかの人には意味がわからず、混乱させてしまうことがあります。
話を聞く人の立場を考えて、わかりやすい言葉に置き換えて話すように意識していくと良いですね。
若者言葉
専門用語と同じく、若者言葉も使わないようにしましょう。
友達と当たり前に使っている言葉でも、ネット用語などの世間で流行っている言葉は、高齢の利用者に伝わらない可能性が高いです。わからない言葉を投げかけられると、不安に思ってしまう利用者も出てきます。
利用者はあくまで友達ではなくお客さまという認識を再確認し、理解しやすい言葉を使っていきましょう。
侮辱する言葉
「ヨボヨボ」「ボケてる」といった利用者を侮辱する言葉は、本人の人格を否定する言葉であり、絶対に言ってはいけません。本人はもちろん、周りの人を傷つけてしまいます。
職員同士の会話であっても、利用者や家族がたまたま居合わせて聞いてしまう可能性があるので、そのような言葉自体の使用をしないように心がけましょう。
介護士が正しく接するために心がけたい3つのこと
介護士が使ってはいけない言葉を見て、中には「つい使ってしまいそう」と思う言葉もあったかもしれません。
言葉を変えるには、自分の中の心がけを変えるのが効果的です。心がけひとつで、不適切な表現は格段に減っていきます。
介護士が利用者に正しく接するために心がけたいことについてこの章で紹介しますので、ぜひ読んでみてください。
- 相手を尊重する
- 相手の立場に立つ
- 柔らかい言葉を使う
相手を尊重する
介護士は利用者を尊重し、1人の「人生の先輩」として接するよう心がけてください。
「介護する者」「介護される者」は決して上限関係ではなく、豊かな人生をサポートしてくれる「伴走者」です。
利用者を尊重しながらお世話をしていると、上記で紹介した言葉そのものも出なくなります。また、介護士の気持ちが利用者に伝わり、信頼関係の構築につながるでしょう。
相手の立場に立つ
利用者に適した介護を提供するため、介護士は利用者のことをよく知って、相手の立場に立った接遇を心がけましょう。
利用者が不快に思うようなことや、傷つくようなことを想像すると、何をすべきで何をしてはいけないかがわかってきます。
一人ひとりの利用者が何をしてほしいのか、それに対して自分はどう動いたら良いのかを常に考えながら介護を行うと、利用者が喜ぶ正しい接遇につながります。
柔らかい言葉を使う
過剰な敬語や強い言葉使いは、利用者を萎縮させてしまったり不安を感じさせてしまったりするため、できるだけ柔らかい言葉を使うよう意識しましょう。
介護士が言い回しを丁寧にすることで、利用者に敬意があることを示せます。言葉の語尾に「です」「ます」の助動詞をつけると、柔らかい丁寧語になります。
ほかにも次の章で解説する「クッション言葉」は言葉の強さや圧を抑えてくれる役割を持つため、今日から使える表現としてぜひ覚えておくと良いでしょう。
【今日から使える】介護士が覚えておきたい「クッション言葉」
介護士が使ってはいけない言葉の中に、直接的に使うと利用者を不安にさせるおそれのある命令口調や行動の制限があります。
しかし介護の現場では、どうしても利用者の依頼を断ったり間違いを指摘する必要がある場面も出てきます。そのような状況では「クッション言葉」をはさむと相手に受け入れられやすくなる可能性があるので、この章で具体的にみていきましょう。
- クッション言葉とは
- 介護で使えるクッション言葉の具体例
クッション言葉とは
クッション言葉とは、「そのまま伝えてしまうと相手に不安や不快感を与える可能性になる言葉の衝撃を和らげてくれるもの」です。
クッション言葉を使うことで相手の気持ちも和らげ、同時に自分の気持ちの負担も減らせます。
クッション言葉はどのような言葉を指すのか、具体例とともに見ていきましょう。
介護で使えるクッション言葉の具体例
介護で使えるクッション言葉と具体例を以下の表にまとめました。
クッション言葉 | 具体例 |
よろしければ | よろしければ、現在の体調を教えていただけますか? |
申し訳ございませんが | 申し訳ございませんが、10分ほどお待ちいただくことになります |
恐れ入りますが | 恐れ入りますが、この場所での喫煙は控えていただけますか? |
それは○○の事情により | それは弊社の事情によりお断りさせていただいております |
こちらから○○します | こちらから連絡します |
私どもの説明不足だったかもしれませんが | 私どもの説明不足だったかもしれませんが、そちらは○○さんにとって負担がかかります |
お力になれることがあれば | お力になれることがあればいつでもお手伝いさせてください |
どれも今日から使える言葉ばかりです。
介護士として働き始める人やこれから介護士になろうと思っている人は、ぜひクッション言葉を身につけておくと、利用者とのコミュニケーションを円滑にはかれるでしょう。
まとめ
この記事では、介護士が使ってはいけない言葉の具体例や、正しい接遇を提供するための心構えを紹介しました。
どんなに距離が縮まったとしても、介護士にとって利用者は「お客さま」であり「人生の先輩」であるため、特に尊敬の念を込めてお世話をする点を特に忘れないようにしましょう。
どうしても利用者に対して依頼を断ったり間違ったことを指摘したりしなければならない際は、クッション言葉を用いて柔らかく伝えるのがおすすめです。
この記事を参考に、利用者の伴走者としてお互いが心地よくなる言葉を使ってサポートをしていきましょう。