「介護福祉士とはどのような資格?」
「介護福祉士の仕事内容や取得するメリットが知りたい」
介護福祉士について、このように感じている人は多いのではないでしょうか。
介護福祉士とは、介護系の資格のなかで唯一の国家資格で、取得することで年収が上がる、仕事の幅が広がるなどのメリットを得られる資格です。
本記事では、介護福祉士の資格とはどんなものか、他の資格との違いや、具体的な仕事内容、メリットを紹介します。
介護福祉士のキャリアパスや、よくあるQ&Aも紹介しますので、介護福祉士について気になる人は、ぜひ最後まで読んでみてください。
介護福祉士の資格とは
介護福祉士とは、介護系資格唯一の国家資格です。資格を取得することで、専門的な知識やスキルがあることの証明になり、周りから信頼を得られます。そのため、重要なポジションで働く人も多いです。
介護福祉士は、介護が必要な人の身辺の介護のほか、毎日の健康管理や、家族からの相談へのアドバイス、指導などに携わります。介護目標や計画の立案もおこなうため、まさに介護のプロフェッショナルといえるでしょう。
介護福祉士の資格を取得するための、介護福祉士国家試験は年1回実施されるもので、以下は令和4年度の概要です。
試験日 | 筆記試験:2023年1月29日(日) 実技試験:2023年3月5日(日) |
試験会場 | 筆記試験:全国35都道府県 実技試験:東京都、大阪府 |
受験費用 | 18,380円 |
合格率 | 約70% |
受験申込書の提出期間 | 令和4年8月10日(水曜日)から9月9日(金曜日)まで(消印有効) |
受験申込書の提出方法 | 郵送またはインターネット |
令和5年度の申し込み手続きの詳細は、令和5年7月上旬頃に案内が発表される予定です。介護福祉士を受けてみようと思った人は、令和5年度の資格試験に向けて、対策を練っていきましょう。
介護士との違い
では、一般に「介護士」とされる職業と、「介護福祉士」にはどのような違いがあるのでしょうか。
結論からいうと、介護士と介護福祉士は、資格があるかないかの違いになります。
国家資格には、「業務独占」と「名称独占」の2種類の資格がありますが、介護福祉士はそのうち「名称独占」の資格です。
介護福祉士国家試験に合格した人だけが介護福祉士と名乗れますが、その業務は介護福祉士の資格を持っていない人も行うことができます。
他の資格との違い
介護にかかわる資格は、介護福祉士を含めて5つあります。特徴と難易度は、以下の通りです。
資格名 | 特徴 | 難易度 |
介護職員初任者研修 | ・介護の入門資格 ・厚生労働省認定 | 低 |
介護職員実務者研修 | ・介護職員初任者研修の上位資格 ・基本的な介護提供能力を習得できる ・介護福祉士受験の際に必須 | 低 |
介護福祉士 | ・介護の一定の知識や技能を習得できていることを示せる ・介護の資格のなかで唯一の国家資格 | 低 |
ケアマネージャー(ケアマネ) | ・要介護者が、介護サービスを円滑に利用できるようサポートする | 高 |
認定介護福祉士 | ・介護福祉士の上位資格(介護福祉士として5年以上の実務経験要) ・リーダーとして働く介護職員にサービスの向上や指導をする ・他の職種と連携や協働をはかる | 高 |
今回紹介している介護福祉士と他の資格との大きな違いは、介護福祉士が介護系資格唯一の国家資格である点です。しかし、合格率は約70%のため、国家資格としては難易度は低いとみられています。
介護職は、無資格でもたずさわれる仕事ですが、収入を増やしたり、キャリアアップをめざそうと思うと、資格の取得がおすすめです。入門資格である介護職員初任者研修を持っているだけでも、転職先が増える可能性もあります。
たとえば、介護業界への転職に多くの人に利用されている「カイゴジョブ」では、無資格OKの求人数が26,000件であるのに比べ、資格保有者が申し込める求人は、約102,000件と約5倍です。
資格を持っていればそのぶん転職先の選択肢が増えるため、今後も介護業界で仕事をしていきたいと思う人には、資格の取得をおすすめします。
まずは介護職員初任者研修から取得し、介護福祉士の資格が取得できると良いですね。
関連記事:カイゴジョブの評判は?メリット・デメリットやおすすめの人を紹介
介護福祉士の仕事内容とは
介護福祉士の仕事内容とは、どのようなものがあるのでしょうか。以下で紹介します。
- 身体介護
- 生活援助
- 相談・助言
- 社会活動支援
- チームマネジメント
身体介護
身体介護とは、介助者が介護者の身体に直接触れておこなうサービスのことです。具体的には以下のような介助があてはまります。
- 食事
- 入浴
- 排せつ
- 移動・移乗
- 更衣介助
- 清拭
これらのサービスには、事前の準備や安全確認などがともないます。たとえば心臓が弱い人には都度の脈拍確認や、関節に痛みがある人には痛みが増強しないような配慮が必要です。
身体介護は、施設の中で介護をする場合は無資格でも可能ですが、訪問介護の場合は介護職員初任者研修以上の資格が必要なサービスとなっています。
生活援助
生活援助とは、生活に必要なことを代行するサービスのことです。具体的な内容は以下の通りです。
- 買い物
- 料理
- 洗濯
- 掃除
- アイロンがけ
- ゴミだし
- ベッドメイク
本人や家族がおこなえない家事を中心に、介護者の身体に直接触れない援助をおこないます。一方で、大掃除や家具の移動、窓ふきなど、日常生活を超えた家事や生活援助は対象外です。
関連記事:生活介護とは?簡単に紹介します【支援内容・対象者】
相談・助言
介護者はもちろん、家族や関係者の相談を受けたり、的確なアドバイスを行うのも介護福祉士の仕事です。
- 保険や要介護認定について
- 基本的な介助方法
- 福祉用具の案内
- 介護者や家族のメンタルケア
相談・助言は、普段は見えない生活上の課題をあきらかにし、より良い形で日常生活をすごせるよう、導くことが目的です。
介護者や家族から話を聞いた上で、必要なサービスへの案内や、継続的なケアをおこなうことが求められる場合もあります。
社会活動支援
介護が必要な人は、外に出るのがおっくうになったり、ふさぎこんでしまったりすることが原因で、社会とのつながりが希薄になってしまうことが多いようです。
そのため、介護福祉士は、介護者の社会参加をサポートする役割も持っています。
- 就労支援
- 地域活動などの情報提供
少し古い資料になりますが、東京都健康長寿医療センターが行った高齢者に対する調査によると、社会とのつながりを持つ人は、社会とのつながりを持たない人と比較して、生存者割合が2.2倍高いという結果があります。
関連資料:高齢期の社会的孤立と閉じこもり傾向による死亡リスク約 2 倍
社会活動支援がとても重要なものであることが良くわかる資料となっています。
チームマネジメント
介護福祉士として一定の経験をつんだあとは、国家資格を持つチームリーダーとして、介護にかかわる人を取りまとめる、チームマネジメントも仕事として求められるようになります。
介護の現場では、個人の技術だけでなく、医師や看護師、社会福祉士と連携し、介護者をケアしていく「チームケア」が必要です。チームケアにより、介護者により良い介護サービスを提供していくことができます。
- 介護士への業務指導
- 介護士の教育指導
- 介護サービス内容の見直し
ほかにも、勤務シフトの作成や見直しなども介護福祉士の仕事です。
チームマネジメントをおこないチームケアで介護サービスの提供ができれば、いつどの介護者がサービスを利用しても、同じクオリティを保つことができるので、高い満足感につながるでしょう。
介護福祉士の資格を取るメリットとは
介護士と介護福祉士の違いは、資格があるかないかと伝えましたので、わざわざ資格を取る必要はないのではないかと思う人もいることでしょう。
とはいえ、介護福祉士を取るメリットはあります。大きなメリットである3つについて、この章で紹介しますね
- 知識やスキルの証明になる
- 年収が上がる
- 仕事の幅が広がる
知識やスキルの証明になる
介護福祉士の資格は国家資格のため、介護における高度な知識やスキルを有していることの証明になりえます。
そのため、介護者やその家族からの信用に繋がりやすく、サービスの質の向上にもつながるため、介護業界に貢献できるといえるでしょう。
年収が上がる
介護福祉士の資格を持っていると、業務に役立つ資格を持つ従業員にたいして支給される「資格手当」がつくため、そのぶん年収が上がるメリットがあります。
以下は、厚生労働省の調査により、無資格、また、それぞれの資格を持った介護士の令和2年度の平均年収を調査した結果です。
資格名 | 令和2年度の平均年収 |
無資格 | 3,311,040円 |
介護職員初任者研修 | 3,614,520円 |
介護職員実務者研修 | 3,638,760円 |
介護福祉士 | 3,951,000円 |
表を見ても、無資格の人より資格保持者のほうが平均年収が高いことがわかります。なかでも介護福祉士は、介護職員初任者研修、介護職員実務者研修の人よりも、30万円ほど高い年収を得ています。
この結果からも、介護業界で働くのであれば、介護福祉士の資格は持っておくと良いといえますね。
仕事の幅が広がる
介護福祉士の資格は、転職先として選べる場所が多様で、仕事の幅が広がる点もメリットです。
介護福祉士の資格を取ったときに働ける職場は、以下が挙げられます。
- 介護老人保健施設
- 特別養護老人ホーム
- デイサービス
- グループホーム
- 生活介護
- 放課後等デイサービス
- 医療機関
少子高齢化問題を背景に、人材不足が深刻な問題となっている介護業界では、知識や経験が豊富な介護福祉士は、事業所にとってぜひほしい人物です。
働ける職場の幅が広がるだけでなく、良い条件で転職できる可能性も高まるでしょう。
介護福祉士の将来性とキャリアパスとは
介護福祉士とは、75歳以上の高齢者が継続的に増えていく日本において、非常に需要のある仕事です。介護福祉士の将来性とキャリアパスを、みていきましょう。
- 将来性はある
- キャリアパスも幅広い
将来性はある
介護福祉士は、介護業界を担う存在として期待されているため、将来性は十分にあるといえます。そういえる理由は以下の3つです。
- 高齢化で需要が増える
- 国が労働環境の改善を進めている
- AIに取られることはな
現在も高齢化と叫ばれている日本ですが、2040年には65歳以上の高齢者が人口の35%以上になると予測されており、それにともなって介護職員も約69万人に増やす必要があるようです。そのため、介護福祉士の需要は今後も高まるといえます。
また、介護業界といえば、「給料が安い」「過重労働」「有給が取れない」など、労働環境が悪いイメージを持つ人もいるでしょう。しかし、厚生労働省は現在、介護労働者の労働環境の改善を進めているため、近い将来良くなっていくことが期待されます。
さらに、AI技術によって今後なくなるのではないかといわれている職業がいくつもありますが、介護福祉士の仕事は、AIに取られることはありません。もちろん、事務処理作業やデータの取り扱いはAIを導入して効率化されていくと予測されますが、介護福祉士の仕事は、介護者一人ひとりに向き合い、気持ちに寄り添ったサービスをおこなう仕事です。
介護福祉士の仕事は、AIに取ってかわることのできない、これからも需要がある仕事といえるでしょう。
キャリアパスも幅広い
介護福祉士のキャリアパスは、以下が考えられます。
- 上位資格を取り、介護職のエキスパートになる
- 相談援助の職種へキャリアアップ
- 施設や事業所の運営
介護福祉士の実務を5年以上経験し、認定介護福祉士養成講座を600時間修了すると、上位資格である「認定介護福祉士」の資格が取得可能です。認定介護福祉士は、介護福祉士として培ってきた知識や経験を活かし、リーダーとして、介護職員への教育や指導をおこなう立場になります。
相談援助の職種へキャリアアップする方法もあるようです。相談援助職には、ケアプランを作成する「ケアマネージャー」や、ヘルパーさんの手配やスケジュール管理をおこなう「サービス提供責任者」などが含まれます。
施設や事業所の運営へ進んだ介護福祉士もいるようです。業務の内容としては、介護者や職員の管理や金銭的な管理、施設の運営についての管理を行います。
介護福祉士の資格を取る方法とは
ここまで読んで、介護福祉士の資格に魅力を感じた人も多いでしょう。ここからは、実際に介護福祉士の資格を取得したいと思ったときの、3つのルートとはどのようなものかについて紹介します。
- 実務経験ルート
- 福祉系高校ルート
- 養成施設ルート
1つは、介護現場で従事期間3年以上、従事日数540日以上の実務経験を積み、実務者研修を修了すると受験資格が得られる「実務経験ルート」です。日数の計算に雇用形態は関係なく、パートやアルバイトなどでも実務経験として扱われます。
2つ目は、福祉系高校もしくは福祉系特例高等学校を卒業して、介護福祉士国家試験を受ける「福祉系高校ルート」です。福祉系高校を平成21年度以降に入学した人は、卒業後に筆記試験で合格すれば介護福祉士の資格取得が可能ですが、平成20年度以降に入学した人は、卒業後に筆記試験にくわえて実技試験での合格が必要となります。
3つ目は、厚生労働大臣が指定する指定養成施設を卒業して、介護福祉士試験を受ける「養成施設ルート」です。学歴によって養成施設に通う期間がことなり、普通化の高校を卒業した人は2年以上、福祉系大学や社会福祉士養成施設、保育士養成施設を卒業した人は、1年以上と定められています。
自身のキャリアによって、どのルートで介護福祉士の資格を取得したいかを定めていくと良いでしょう。
介護福祉士でよくあるQ&A
介護福祉士の資格取得について、よくあるQ&Aを紹介します。
- 未経験から最短で合格するには?
- 合格後にすることは
- 資格がはく奪されることはある?
未経験から最短で合格するには?
介護業界未経験の場合は、養成施設ルートで介護福祉士の資格を取ることが、最短合格への道です。
養成施設として指定を受けた専門学校などに入学し、1年〜2年の年数を修了することで、介護福祉士の受験資格を得ることができるからです。
実務経験を積みながら介護福祉士をめざした方が良いと思う人もいると思いますが、実務経験ルートは紹介したように、3年以上の従事期間が必要となるため、現時点で最短は「養成施設ルート」といえるでしょう。
合格後にすることは
介護福祉士の試験に合格しただけでは、資格の取得にはなりません。合格後には、資格登録が必要となります。
合格後の資格登録には、約1ヶ月の期間がかかります。また、新規登録には「登録免許税」9,000円と「登録手数料」3,320円が必要ですので、あらかじめ準備しておきましょう。
簡易書留で提出する必要書類は、以下の通りです。
- 登録申請書
- 登録免許税「収入印紙」の原本
- 登録手数料『振替払込受付証明書(お客さま用)』
- 貼付用紙
- 本人確認書類
- 介護福祉士養成施設の卒業証明書の原本(介護福祉士養成施設卒業者のみ)
資格試験合格後はすみやかに必要書類をそろえ、登録にすすみましょう。
資格がはく奪されることはある?
介護福祉士には有効期限はありませんが、「社会福祉士及び介護福祉士法」により、資格をはく奪されることはありえます。
なかでも「信用失墜行為の禁止」に該当する不法行為は、介護業界全体の不名誉といえるでしょう。
まとめ
介護士と介護福祉士とは、資格があるかないかの違いになりますが、同じ介護業界で働くのであれば、介護福祉士の資格取得を前向きに検討しましょう。
介護福祉士の資格を取得すると、介護者や家族からの信用を得やすくなったり、資格手当によって年収が上がったり、転職時の仕事の幅が広がったりといったメリットが得られます。介護福祉士には将来性もあると考えられ、幅広いキャリアパスも用意されています。
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