- 「利用者とのコミュニケーションの取り方を知りたい」
- 「職員同士のコミュニケーションに不安がある」
このような悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
結論からいいますと、介護におけるコミュニケーションの重要性は高いと言えます。
というのも、利用者の障害や疾病などの特徴を理解するとともに、コミュニケーションが正しくとれるかどうかが求められるからです。
この記事では、介護でのコミュニケーションの重要性やうまく話すポイントなどをまとめました。利用者とのコミュニケーションの取り方が気になる方は、ぜひ参考にしてください。
介護でコミュニケーションの重要性が高いといえる理由
介護におけるコミュニケーションとは、言葉だけでなく身体全体を使う必要があります。介護を必要とする利用者のなかには、障害や疾病などによってコミュニケーションが難しくなり、自分の考えや想いを介護士に伝えるのが困難になっている方がいるからです。
たとえば、顔の表情や動作、目の動き、手の動き、足の動きなどから利用者の伝えたいことを感じ取り、利用者とのコミュニケーションをとります。
よって介護職は利用者の不安やストレスを解消するため、コミュニケーションが多い仕事です。利用者の障害や疾病などの特徴を理解するとともに、コミュニケーションが正しくとれるかどうかが求められます。
利用者:信頼関係を築く
利用者との信頼関係を築くには、コミュニケーションとして「会話」が欠かせません。利用者のなかには高齢で障害や認知症によりうまく伝えられず、日常生活で寂しい思いをしている利用者もいるからです。
そのため介護の現場では、利用者の状況に合わせてコミュニケーション方法を工夫する必要があり、会話以外でも体を使って「ジェスチャー」で伝えるケースもあります。
利用者に合わせてうまくコミュニケーションが取れれば、信頼関係は大きなものになります。
利用者の家族:安心して預けてもらえる
利用者の様子を家族に伝えることは、介護職の重要な役割であり安心感にもつながります。施設での様子や体調の変化などを丁寧に伝えるには、こまめなコミュニケーションが大切です。
介護職として困ったときに相談できる信頼関係を、利用者の家族と築くことも必要でしょう。
スタッフ:仕事を進めやすくなる
介護職では、フルタイムやパートタイムなど、さまざまな勤務形態でチームとして仕事を進めることが多いです。そのためスタッフ同士の適切なコミュニケーションがあれば、仕事を進めやすくなります。
たとえば、シフトの交代時などでは、短時間で利用者の様子やその日の業務をスタッフに伝えなければなりません。
事故やトラブルを防止するためにも、さまざまな人と連携してうまく仕事を進めるにはコミュニケーションは重要です。
介護士がコミュニケーションをうまくとる7つのポイント
介護士がコミュニケーションをうまくとるポイントは、以下の7つです。
- 共通の話題を作る
- 話を聞く姿勢を持つ
- 順序だてて話す
- 非言語コミュニケーションも交える
- 表情やしぐさに気をつける
- 言葉遣いに気をつける
- こまめに報連相を行う
共通の話題を作る
利用者がどのような話題に興味があるか、チェックしておきましょう。利用者との共通の話題があると「何を話したらいいのか?」と悩まなくて済むからです。
共通の話題と具体例を、以下のようにまとめたので参考にしてください。
天気、季節 | 「今日は秋晴れで、紅葉が見頃ですよ」 「そろそろお正月ですね」 |
出身地 | 「◯◯は〇〇が有名ですね」 「◯◯の方言は難しいですね」 |
趣味、特技 | 「〇〇がお上手ですね」 「〇〇が素敵ですね」 |
ニュース | 「あのドラマは最終回どうなったんですかね」 「最近、風邪が流行っているみたいですね」 |
ただし、政治や宗教、スポーツなどの話題は、個人の思想や好みもあるので控えましょう。
話を聞く姿勢を持つ
人は自分の話を聞いてもらいたい傾向にあるため、まずは介護士として利用者の話を聞く姿勢を持ちましょう。利用者の話をすぐに否定したり、自分の話にもっていったりしてはいけません。
利用者のことを理解するためには質問をすることが重要ですが、質問には「開かれた質問(オープンクエッション)」と「閉ざされた質問(クローズドクエッション)」があります。ふたつの特徴を知ることで使い分けができれば、コミュニケーションをより深めることができるでしょう。
特徴 | 例 | |
閉ざされた質問 | 「はい」または「いいえ」、簡単な一言で答えられる質問の方法。 開かれた質問への回答が難しい場合に使用する。 | 「お年はいくつですか」 「元気ですか」 「〇〇はお好きですか」 |
開かれた質問 | 「はい」または「いいえ」では答えられない質問の方法。 利用者の言葉を引き出すことが狙い。 | 「ご家族はどこにお住まいですか」 「どのようなお仕事されているのですか」 「なぜそのように思うのですか」 |
また、質問するときはまず「閉ざされた質問」から始めることがおすすめです。その後、徐々に開かれた質問に移り、利用者の感情や想いなどが表現できるように工夫します。
順序だてて話す
利用者とのコミュニケーションで気を付けたいポイントとして、利用者に伝わりやすいように、順序だてて話すことがおすすめです。その際に自分から一方的に話すのではなく、合間合間で伝わっているか確認すると、より好印象となり信頼関係も築けるでしょう。
非言語コミュニケーションも交える
非言語的コミュニケーションとは、言葉以外の表現を通じて相手に伝える方法です。人は言葉による表現よりも、身振り手振りなどからメッセージを受けることが多いと言われています。
非言語的コミュニケーションを伝達する手段は、以下の通りです。
近言語(バラ言語) | 声の大小・テンポ、言葉の連続性など、話す言葉の表情 |
身体表現 | 容姿や化粧、髪型、視線、姿勢など相手の身体の表情 |
物 | 服装、所有物、創作物など持っている物に現れる自我 |
利用者とのコミュニケーションを図る際には言葉だけでなく、視覚や聴覚から相手が情報を得るケースは少なくありません。特に「相づち」があるかないかで、話している相手の安心感は大きく変わるので、意識してみましょう。
表情やしぐさに気をつける
利用者と会話するときは、仕草や表情といった非言語コミュニケーションを活用してみましょう。言葉遣いや話し方だけでなく表情やしぐさで共感を示すことで、利用者に好印象を与えられます。
表情やしぐさによっては利用者が警戒してしまうので、注意しましょう。
NGな表情やしぐさは、以下の通りです。
- 怒った表情
- 疲れた表情
- 無表情
- 腕組み
- イライラした態度
利用者と信頼関係を築くコミュニケーションとして、話している内容に合わせて表情やしぐさを変えるのがコツといえます。
言葉遣いに気をつける
利用者とのコミュニケーションでは、言葉遣いに気をつけましょう。言葉遣いは、表情やしぐさと同じくらい重要だからです。
一般的な接遇での言葉遣いは敬語が基本ですが、介護の現場では利用者との関係性によっては、敬語を使わず少しフランクな話し方をする場合もあります。
とはいえ、NGな言葉遣いはあるので注意が必要です。
- タメ口
- 過剰な敬語
- 赤ちゃん言葉
- 命令口調
- 行動の制限
- 呼び捨てやあだ名
- 脅し文句
- 急かす言葉
- 専門用語
- 若者言葉
- 侮辱する言葉
介護士が使ってはいけない言葉のなかには、直接的に使うと利用者を不安にさせてしまうおそれのある命令口調や行動の制限があります。そのような状況では「クッション言葉」をはさむと相手に受け入れられやすくなる可能性があるので、コミュニケーション術として活用しましょう。
クッション言葉とは、そのまま伝えてしまうときつい印象や不快感を与えるおそれがあることを、やわらかく伝えるために前置きとして添える言葉を指します。
こまめに報連相を行う
事業所内での円滑なコミュニケーションを図るためには、利用者の家族やスタッフにはこまめに報連相を行いましょう。こまめな報連相は信頼関係を築けるだけでなく、介護事故を未然に防ぐきっかけにもなります。
たとえば、報連相を組織のためと考えると、堅苦しかったり、曖昧だったり、重苦しくなったり、コミュニケーションを義務的に考えてしまい難しくなってしまうでしょう。
報連相はコミュニケーションの一つの作法として、意識の片隅に置きながら、利用者とのコミュニケーションを図ることが必要と言えます。
【事例別】介護のコミュニケーションで必要な工夫
介護のコミュニケーションで必要な工夫について、以下の3つの事例別に紹介します。
- 認知症の人
- 不安感が強い人
- 職員同士
認知症の人
認知症の利用者とコミュニケーションを図るうえで、重要なのは否定しないことです。なぜ自分がここにいるのか、目の前にいる人が誰なのかが分からない状態にあるからです。 つまり、認知症の方のなかには、対人関係において不安を感じる人がいるといっていいでしょう。
認知症の症状は、以下のような症状があります。
- 記憶力の低下(数分前、数時間前の出来事を忘れる)
- 見当識障害(時間や場所、出来事の前後関係が分からなくなる)
- 判断能力の低下(状況や説明が理解できなくなる)
- 言語障害(言葉がでない、相手が話していることを理解できなくなる)
会話がかみ合わなかったり、話していることと行動が異なったりしても否定せず、寄り添ったコミュニケーションを図り安心感を与えましょう。
不安感が強い人
結論からいいますと、利用者の発する言葉だけにとらわれないことです。利用者の話す内容よりも、その言葉の背景や不安感をくみ取ることが大切といえるでしょう。
- 帰宅願望(家族の迎えはまだなの?、いつ家に帰れるの?)
- 老年期愁訴(病気が本当に治るのか?、何のために生きているのか)
- 不安そうな感情(私はここにいていいの?)
このような場面で、利用者の発する言葉だけをとらえてしまい、誤った対応としてその場しのぎの言葉をかけてしまいます。利用者の言葉の背景や不安感をくみ取り共感的な対応を心がけましょう。
職員同士
事業所での職員同士のコミュニケーションのコツは、相手の立場に立って考え意見を否定しないことがあげられます。介護施設の利用者とのコミュニケーションだけでなく、職員同士のコミュニケーションは欠かせないからです。
ほかにも目線の高さを合わせたり、落ち着いた穏やかな声で話したりするのも効果的といえます。職員同士のコミュニケーションを密に取りたい場合は、このような非言語的コミュニケーションを意識してみるのもよいでしょう。
介護士がコミュニケーションを鍛える方法
介護士がコミュニケーションを鍛える方法として、ヒヤリハット報告書があります。ヒヤリハット報告書とは、ヒヤリハットの原因を明確にし、事故につながる恐れのある状況を報告したものです。
介護の現場からは、ヒヤリハット報告書のほうが事故報告書よりも重要性が高まるほど、認知されています。
ヒヤリハット報告書以外にも方法があるので、以下のようにまとめました。
- 動画や本で学ぶ
- 介護職員初任者研修を受ける
動画や本で学ぶ
介護士がコミュニケーションを鍛えるのにおすすめの書籍やYoutubeでも学べるので、ピックアップしてみました。新人介護士が勉強や情報収集として活用し、介護現場でも確認できます。
おすすめの書籍やYoutubeを、以下のように紹介します。
介護現場で使うコミュニケーションのコツを紹介した本です。
よくあるさまざまなシーンに対応しており、「寝ない」「食べない」「排泄しない」「レクに参加しない」といった介護士が困りやすい状況での声掛けについて学ぶことができます。
言葉だけでなく、声を掛けるときのポイントについても記されています。
チャンネル名:ケアきょう【介護職のためのチャンネル】
チャンネル登録者数 10.7万人1154 本の動画(介護職の方向けお役立ち情報配信中)
介護職員初任者研修を受ける
介護士として介護職員初任者研修の資格の勉強をすることで、学んだ知識を実務で実践できるため、介護に必要な基本的なコミュニケーション技術を身につけることができます。
座学だけで学んでいくよりも実務を交えながら身につけたほうが、知識やコミュニケーション技術が定着しやすいでしょう。
介護士は、実務経験と資格取得を同時に行えるため、効率よくキャリアアップすることができます。
キャリアアップで有利になる「介護福祉士」は介護職の唯一の国家資格です。そんな「介護福祉士」には、受験資格があります。いくつか方法はありますが、もっとも標準的な取得方法としてあげられるのが「実務経験ルート」です。
- 介護施設で実務経験3年以上
- 実務研修を修了
介護福祉士を取得するためにも、実務経験はもちろん、資格の取得にも励みましょう。
まとめ
この記事では、介護ではコミュニケーションの重要性やコミュニケーションをとるポイントなどを紹介しました。
- 共通の話題を作る
- 話を聞く姿勢を持つ
- 順序だてて話す</h3>
- 非言語コミュニケーションも交える
- 表情やしぐさに気をつける
- 言葉遣いに気をつける
- こまめに報連相を行う
介護におけるコミュニケーションの重要性は高いため、さまざまな場面で工夫する必要があることから、コミュニケーション力の向上を目指しましょう。
この記事が、介護士として利用者とのコミュニケーションの取り方が気になる方に少しでもお役に立てれば幸いです。